家族信託で事業承継には費用はどのくらいかかるの?株主の認知症対策をしないとどうなる?

家族信託で事業承継するには、費用はどのくらいかかるのでしょうか?株主の認知症対策をしなかった場合に起こりうることを予想してみました。

家族信託とは

地方都市で、タイヤの卸売りをしている会社がありました。県内にいくつかの販売店、取付工場、保管倉庫を持ち、ディーラーやリース会社からの委託を受け、順調に事業規模を伸ばしてきた会社です。社長は創業者で株式の大半を持っています。

しかしそんな社長も高齢となり、取引先社長の顔と名前や、会議や行事のスケジュールを忘れるなど、認知機能に不安を覚えるようになりました。もし認知症と診断されたら会社の今後の方針を決める重要な総会や会議が開けなくなったり、新たな取引先の開拓や、銀行からの融資が受けられなくなってしまいます。

社長は後継者である息子に株式を譲渡し自分は引退しようと考えていましたが、後継者には株式を買い取れるだけの十分な資金がなく、譲渡するにしても多額の贈与税がかかることが分かり、いずれにせよ後継者に大きな負担をかけてしまうことが分かりました。

ここで社長が後継者である息子との間に「家族信託」の契約をしておくと、これらの問題を回避することができます。

株式の大半を持っているという事は、その会社の議決権を持っているということです。またその会社から報酬を受け取る受益権ももっています。後継者である息子との間に家族信託の契約をすることで、株式そのものを後継者に渡すのではなく、議決権だけを渡すことができます。

これにより、後継者は株式の買い取り資金を用意しなくても、議決権を行使することができますので、社長が認知症の発症などで明確な意思表示ができなくなっても、会社の今後の方向性を決める重要な総会や会議を、後継者が社長に替わって開くことができるようになります。

社長の認知症発症で会社はどうなるのか

大株主でもある社長の認知症対策を行っていなかった場合、株主総会や役員会議など、会社の今後の方向性を決める重要な会議が開けなくなります。それにより、新たな取引先の開拓や新規事業の展開など、会社を維持し発展させるために必要なことができなくなっていきます。

認知症を発症してしまった後では成年後見制度を利用するしかありませんが、成年後見人は会社を発展させるための思い切った投資などはできませんので、良くても現状維持、悪ければ衰退していくしかありません。この制度は社長が亡くなるか、認知症が完全回復するまで続き、その間成年後見人に対しては毎月報酬を支払わなければなりません。

認知症を発症してから平均で8年間生存すると言われています。その8年の間で、どれだけ会社は傾いていくでしょうか。成年後見制度を利用した場合、その8年の間で成年後見人にどれだけの報酬を支払わなければならないのでしょうか?

事業承継で家族信託を利用した場合の費用見積

家族信託見積シミュレーターを使い、事業承継で家族信託を利用した場合の、費用を見積もってみました。

株式が1億5,000万円、現金が5,000万円とした場合、社長と後継者の間で家族信託の契約をした場合、以下のようになります。単位はいずれも万円です。

信託する株価純資産の総額 15000
金銭 5000
株価、金銭の評価額合計 20000
①家族信託設計コンサルフィー 150
⑤消費税=①×10% 15
⑥公証人費用 20
⑦税理士税務チェック費用 10
総合計(①+⑤+⑥+⑦) 195

家族信託の費用は高い?

この会社の場合、家族信託の費用は200万円近い金額となります。金額だけを見て「高い」と判断せず、家族信託をしなかった場合のデメリットをじっくり比較してご検討頂きたいと思います。

社長が認知症を発症し、成年後見制度を利用した場合、成年後見人に対して月額3~5万円の報酬を支払う必要があります。成年後見人として弁護士が選任され、月額5万円の成年後見人報酬を支払った場合、年額で60万円となります。認知症発症から平均で8年間生存すると考えると、その総額は480万円となります。

成年後見人は本人の財産を減らさないことが役目なので、事業拡張のため思い切った投資をするなどの経営判断まではしてくれません。したがって会社は良くて現状維持、悪ければ徐々に衰退していくしかありません。

そう考えると、家族信託をしておくことは、いずれやって来る社長の認知症発症に備えた「保険」とも言えるでしょう。保険と考えれば、家族信託に必要な200万円という費用も、決して高くはない、私はそう思います。

家族信託をしておくメリット

家族信託によって、後継者に対して、株式そのものではなく、議決権だけを渡すことができます。これなら後継者は株式を買い取る資金を用意する必要がありません。また社長は会社のかじ取りを後継者に任せることで、後継者の適性を見るということも可能になります。もし後継者が次期社長として不適格と判断すれば、家族信託の契約を解除することもできます。

家族信託で悩みを解決

会社を経営を社長さん、もしくは後継者の皆さん。社長がもし認知症を発症した時に備えて、家族信託を検討してみませんか?家族信託を専門で研究し、数々の事例を手掛けてきた司法書士の先生におつなぎします。

大切な息子さん、娘さん、そして社員さんが後で困らないように、しっかりと備えておきましょう!

 

 

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