中小企業の社長が認知症発症|契約書にサインができない|家族信託で早めの対策を


地方に行くと、社長が一代で築き上げて、株式の大半を所有していて、80歳近くになっても元気に経営をされている中小企業が結構あるようです。ご子息や親戚が副社長や専務になっていて、実質その方々が経営されているのですが、それでも社長であることを止めない。こんなケースでは、社長が認知症を発症すると、会社は数年で傾いてしまうこともあるそうです。

一代で会社を大きくした社長

社長は今年で80歳になる方で、毎日スリーピースのスーツをビシッと着こなして社長室に現れます。社長室には豪華なデスクと応接セットがあり、窓際には胡蝶蘭などのお花が常に飾られています。

社長はそこで何をするわけでもなく、調べものをしたり、ゴルフのパターの練習をしたり、来客と会ったりと、経営らしいことはほとんどしていません。株主総会や決算、大事な契約の時だけサインと印鑑を押す位で、日常業務は副社長や専務にほとんど任せています。

社長は元々広い農地を所有する農家でしたが、宅地開発のためにそのほとんどを転用して売却し、その資金でダンプカーを何台か購入し、宅地造成に必要な土砂を運ぶ会社を立ち上げました。

時はバブル経済の真っ盛りで、土木・建設業は連続の増収増益でした。ダンプの需要もうなぎのぼりで、会社は一代でかなり大きくすることができました。

その後バブルが弾けると、社長は会社の規模を縮小し細々とダンプのお仕事を続けていましたが、東日本大震災の後、復興特需で再び昔の勢いを取り戻しました。

何度も経営の危機を乗り越えて来たしたたかな社長ですから、社長の座を後継者に譲ることもなく、現役で今に至っています。

社長に認知症の初期症状が

そんな社長に、認知症の初期症状が見られるようになりました。会話の最中に目の焦点が合わなくなり、会話が途切れるようになりました。判断して欲しい場面でも内容が理解できなくなり、急に怒り出すこともしばしありました。

銀行の担当者が様子伺いで来社した際も認知症の初期症状が出てしまい、銀行の担当者がカバンを抱えていそいそと出ていきました。これにより、社長の認知症が銀行の知るところとなりました。

銀行から運転資金の融資がストップ

後日、銀行から運転資金の融資が受けられない旨の通達がありました。融資を受けるために必要な社長のサインと押印が、認知症を発症した状態では無効になってしまうというのがその理由です。

また仮に融資ができたとしても、社長の認知症が進行すると、会社の方針を突然転換することも予想され、銀行としては返済が滞るような事態になりかねないという懸念もあったようです。

社長の認知症に備えて家族信託

いかがでしょうか。このように社長が株の大半を握っている状態で認知症を発症してしまうと、銀行から運転資金の融資が受けられなくなるなど、たちまち会社が傾いてしまうということも考えられます。

早い段階で後継者に株を買い取ってもらうなどの対策ができていれば良いのですが、後継者に株を買い取るだけの十分な資金がない場合は、それも難しくなります。

認知症発症前に、後継者との間で「事業承継」を目的とした家族信託の契約をしておけば、このようなケースでも会社の事業を継続することができるでしょう。

家族信託で何ができる?

社長と後継者の間で家族信託の契約をすると、例えば株そのものを社長が持っていても、議決権だけを後継者が持てるようになります。

これにより会社の事業継続ができるようになりますので、銀行も安心して運転資金の融資を再開することができるようになります。

事業承継で家族信託を活用する場合の費用見積

事業承継で家族信託を活用する場合の費用を見積もってみましょう。後継者に信託する株価純資産総額を1億5,000万円として、 家族信託費用見積シミュレーター2 で計算してみました(単位はすべて万円です)。

信託する株価純資産の総額 15000
金銭
株価、金銭の評価額合計 15000
①家族信託設計コンサルフィー 125
⑤消費税=①×10% 12.5
⑥公証人費用 20
⑦税理士税務チェック費用 10
総合計(①+⑤+⑥+⑦) 167.5

事業承継で家族信託の費用は高い?

先ほど計算した費用を見ると、後継者との間で家族信託の契約をするのに170万円近い費用が発生します。最初の1回だけの費用とは言え、かなりの金額ですね。

ですがこの金額だけを見て「高い」と言うのは早計だと思います。

運転資金の融資が受けられない。中小企業にとってこれがどれだけ怖い事でしょうか。

お客さんはいる、仕事はある、請求書も発送した。でも月末〆の翌々10日払いだから、手形を受け取るまでにはタイムラグがある。その間も社員の給料やダンプの燃料費は払わないとならない。それを役員が自腹で払えるか。これ、現実にはなかなか難しいと思います。

社長が認知症を発症し、銀行から運転資金の融資を受けられなくなる。それだけでこんな綱渡りの状態になってしまうのです。このケースだと、最悪は黒字倒産という事も考えられますね。

社長と後継者の間で家族信託をしておけば、このような事態を避けることができます。初期費用としては高いと感じられるかもしれませんが、会社の将来に備えた「保険」とも言えますから、結果としては高いとは言えないのではないでしょうか。

家族信託で悩みを解決

会社を経営をされている社長さん、社長の認知症発症が怖い後継者の皆さん。事業承継に家族信託を活用してみませんか?

事業承継と家族信託に詳しい司法書士の先生におつなぎします。

大切な会社、ご家族、社員さんが後で困らないように、しっかりと備えておきましょう!

 

 

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